06
10月 2026

ひとりの少女と支援者のよみがえった絆

2026年8月某日、ベトナム事業所のバン所長が来日した際、かつて支援者だった方へお届けする一通の手紙を携えていました。その差出人「ディン・ティ・ミエン」さんは、現在ベトナムの貿易物流会社に勤務して、安定した生活を送っています。

片時も忘れなかった感謝の気持ち
今からさかのぼること7年前、孤児として育ったミエンさんは厳しい経済環境を理由に、大好きな学校へ通うことをあきらめなければならない状況に置かれていました。しかしながら、幸運なことに、日本の支援者様からベトナム事業所を通して、片道11kmを通学するための自転車が贈られました。(注:民際センターではベトナム向けの自転車プロジェクトは実施しておらず、あくまでも個人的・例外的なご支援でした)それからのミエンさんは、より一層勉強に励み、優秀な成績を収め、ベトナムを代表する国立大学の一つである『ベトナム国家大学ハノイ校』を卒業することができました。そして、大学で学んだIT*の知識や技術の備えを生かして、現在の会社に勤務することができています。そんな成功を収めたミエンさんですが、片時も支援者のことを忘れたことはありませんでした。その思いを伝えるため、最大級の感謝の言葉とともに『私はいま、ここまで来ることができました!』と現況を手紙にしたためバン所長に託しました。

IT*:コンピューターやインターネットなどを使って情報を処理・活用する「情報技術(Information Technology)」のこと

   【ディン・ティ・ミエンさん】                                               『感謝の手紙』

岡村智子様

お元気でお過ごしでしょうか。いつもお健やかに、そしてお幸せにお過ごしであることを心より願っています。
何年もの時を経た今、私はこの手紙を書いています。ずっとお伝えしたかった、たった一つの言葉をお伝えするためです。

ありがとうございます。
心の底から、本当に、本当にありがとうございます。

2019年、まだ学生だった私は、勉強を続けることさえ難しい状況にありました。そんな私に、幸運にも岡村様からご支援をいただきました。その時の奨学支援には、自転車と少額の支援金が含まれていました。自転車を受け取ったとき、私は心の中でこう思いました。

「これで、学校に通える。」

家から学校までは約11kmありました。大人にとっては、11kmという距離は、それほど遠くないのかもしれません。でも、当時の私にとっては違いました。孤児として育ち、物資も十分ではなく、誰もが簡単に機会を得られるわけではない場所で暮らしていた貧しい少女にとって、11kmはとても遠い距離でした。岡村様がくださった自転車があったからこそ、私は学校へ通い続け、勉強を続け、自分が歩もうとしていた道を諦めずに済みました。
その後、私はコンピューターについて学びたいと思うようになりました。しかし、私の住んでいた場所にはコンピューターを学べる学校も教室もなく、学ぶためには約20km離れた場所まで行かなければなりませんでした。その時も、岡村様がくださった自転車は私の大切な相棒となり、その道のりを通うことを可能にしてくれました。コンピューターを学び、知識や技術を身につけたことで、私は学校での勉強に加えて、とても大切な力を得ることができました。その時に身につけた知識は、後に私が社会に出て仕事を始めるための、大切な土台の一つになりました。

私はベトナム国家大学ハノイ校の国際経済学部に合格しました。そこはベトナムを代表する有力な国立大学の一つです。そして、その後、良い成績で卒業することができました。今、私は幸運にも、物流・輸出入の分野で安定した仕事に就いています。特に、現在の会社に採用されるためには、大学の学位だけでなく、ITに関する知識やコンピューターを使う能力も必要でした。だからこそ、あの頃、私が一生懸命に学んだコンピューターの知識や技術は、今の私の仕事につながる、とても大切な一部になっています。多くの人にとって、私が「成功した」と言えば、少し大げさに聞こえるかもしれません。でも、私にとっては、本当に大きな成功なのです。

私は孤児として育ちました。学校で学ぶこと、家庭で勉強すること、そして他の子どもたちにとっては当たり前のように思える多くの条件や機会は、私にとって決して当たり前のものではありませんでした。その多くが私には程遠いもので、それらを手にするためには多くの努力が必要でした。それでも今、私は自分の力で学び、働き、自分自身の生活を支えることができています。私にとって、それは決して小さなことではありません。

これまでの道のりを振り返ると、岡村様がくださった自転車は、単なる移動手段ではなかったのだと気づきます。その自転車は、私が学校へ通う道のりを一緒に歩んでくれました。コンピューターを学ぶ場所へ連れて行ってくれました。そして、私が未来へ向かって歩き始めた、その最初の歩みの一部になってくれました。そして何より、岡村様からいただいたご支援は、「私を信じて、前へ進むよう励ましてくれる人がいる」という気持ちを、私に与えてくれました。岡村様からご支援をいただいたのは、一度だけだったかもしれません。でも、そのご支援が持つ意味は、この何年もの間、ずっと私の心の中に残り続けています。今日、人生の新しい章を始めるにあたって、私は岡村様に伝えたいのです。あの日いただいた優しさとご支援を、私は決して忘れていません。

そして、もう一つお伝えしたいことがあります。
以前の私は、自分より年上の方に感謝を伝える手紙を書くなら、手書きにすることが礼儀であり、相手への敬意を表す方法だと思っていました。でも今回は、あえてこの手紙をコンピューターで書き、印刷して岡村様にお送りすることにしました。なぜなら、岡村様に一つ、見ていただきたいことがあるからです。

「私は、今、ここまで来ることができました。」

あの日、岡村様が私にくださったものは、一台の自転車と、温かいご支援でした。でも、私にとって、それは決して単なる自転車ではありませんでした。それは、私を未来へ向かわせてくれた、大切な道具でした。そして、それ以上に、それは一つの「機会」でした。人生において、私がもう一歩前へ進むことを可能にしてくれた、大切な機会でした。あの自転車が、私の人生にとってこれほど大きな意味を持つことになるとは、岡村様ご自身も想像されなかったかもしれません。だからこそ私は、この手紙を通して、あの日岡村様が助けてくださった小さな女の子が、あれからどう成長したのかをお伝えしたかったのです。

私は、岡村様の優しさを決して忘れません。

いつの日か、私にも誰かを助けることができる力が身についたなら、その時には、岡村様が私にくださった支援と希望を、今度は私から誰かに渡していける人になりたいと思っています。これからも、私は一生懸命働き、そして人に優しく、誠実な人生を歩んでいきたいと思います。

心の底から、岡村様がいつまでもお元気で、たくさんの笑顔に恵まれ、幸せな日々を過ごされることを願っています。そして、いつかもし直接お会いできる日が来たら、その時は自分の口で、こうお伝えしたいです。

「岡村様、私はちゃんとここまで来ることができました。あの日、岡村様がくださった自転車が、今の私がいる未来まで連れてきてくれました。」

本当に、本当にありがとうございます。

心からの感謝と深い敬意を込めて
ディン・ティ・ミエン(Đinh Thị Mến)


手紙を受けて、支援者様の驚きと感動の涙

この手紙を受け取られたのは、ミエンさんに自転車を支援された岡村大作様、智子様ご夫妻です。その手紙を、深い感動のなか涙ながらに目を通された岡村様は、バン所長を介して後日ミエンさん宛てに返信の手紙を書かれました。(注:以下はその抜粋になります)

Dinh Thi Menさん

うれしいお手紙をいただき、大きな喜びと感謝を感じ、感動しています。そしてミエンさんの文章が素晴らしく、豊かな人柄を感じるお手紙でした。ありがとうございます。

最初に自転車を送ることにした私の気持をお伝えします。ベトナムの人たちは日本人と似ていると思い、そしてその人柄を好きになったのです。そんな中で恵まれない人に支援することができればうれしいとの思いで、ほんのわずかな支援をしました。

そのことにミエンさんは私が期待した数十倍の思いを持ってくれたこと、そしてそれを感謝してくださっていること、とても嬉しく思います。感動したのは、ミエンさんがそれを力にし、成功を勝ち取られたことです。この想像を絶する努力の結果、誰にも遠慮することなく伝えることができる大成功を得たと思います。本当に素晴らしいことです。私のわずかな善意はミエンさんの努力によって非常に大きな結果へと導かれました。ありがとう。心から嬉しく思います。

ミエンさんの成功はまだまだ始まったばかり。10年、20年先のミエンさんの成長を見るのが楽しみです。私は今79歳、100歳を目指して、頑張ってミエンさんとの縁を大切にしていこうと思います。ミエンさんが成功者である事は間違いありません。しかし、そこに留まらないでさらに成長して行くことでしょう、応援もしていきたいと思います。

お会いできる日を楽しみにしています。と言うのは、私と智子でベトナムに行きたいと思っています。その時はよろしくお願いします。お元気で

岡村大作 岡村智子


よみがえった絆

7年間という時を超えて、一人の貧しい少女が夢をあきらめず、温かいご支援を受けて大きく成長し、その間ひと時も忘れなかった支援者への感謝を伝える。その手助けをするのも私たちの大切な務めと思い出させてくれた、心温まる感動の出来事でした。

「ダルニー奨学金」「HOPE奨学金」は、ドナー1人につき1人の子どもを支援し、子どもには誰が支援してくれているのかを伝える、顔が見える、成長が見守れる、1対1の国際教育里親制度です。皆様からのご支援、お待ちしております。

民際センターでご支援いただけるプロジェクト

You are donating to : Greennature Foundation

How much would you like to donate?
$10 $20 $30
Would you like to make regular donations? I would like to make donation(s)
How many times would you like this to recur? (including this payment) *
Name *
Last Name *
Email *
Phone
Address
Additional Note
paypalstripe
Loading...