少数民族教師育成プロジェクト

2019年度卒業式の日:サーラワン教師養成短期大学にて

ラオスには、50の少数民族が暮らし、その数は人口の過半数近くを占めます。彼らは、公用語のラオ語とは別のそれぞれに固有の言葉を話します。しかし、学校教育はラオ語でおこなわれるため、特に小学校に通う生徒は先生の話す言葉がわからず、それが原因で中退していく生徒が後を絶ちません。そのような状況を受け、民際センターでは、2004年から、少数民族出身の学生たちが教師になることを支援する「少数民族教師養成プロジェクト」を実施しています。教員資格を取得した彼らは、故郷の村に戻って教師になり、自分たちの言葉を用いて子どもたちを教えています。

【ラオスの現状】

支援地域の地図

教師数の不足は、ラオスの教育において重要な問題の一つです。少数民族の多くは、道路も電気もない山間地域に住んでおり、昨年卒業した生徒の何人かは、舟で川を渡らなければ、訪れることができない村に住んでいます。そのため、村の学校で教える教師を見つけるこは困難を極めます。また、多数の少数民族が居住している山間地域では、教師1人が1学年60人以上のクラスを複数受け持たなければならない場合もあります。国の政策により、授業はすべて公用語のラオ語で行わるため、ラオ語が理解できない少数民族の子どもたちは、授業についていくことが非常に難しく、それが原因で留年や中途退学を余儀なくされる生徒が多くいます。また、少数民族出身の教師が足りず、教師の多くはその固有の言語が分からないため、子どもと教師のコミュニケーションをとることすら難しい現状がラオスの教育環境をさらに厳しくしています。

このような状況を改善するため、民際センターでは、2004年から少数民族出身の教師を養成するプログラムを実施し、教師志望の少数民族出身の学生たちが教師養成短大で勉強できるように、奨学金を支給しています。2年後、教師免許を取得した奨学生は出身村の学校で教える資格を得ます。授業中に子どもたちの言語で補足説明することで、子どもたちの授業の理解と就学率の向上に貢献しています。残念ながら、多くの少数民族は経済的に恵まれないためその教育レベルは低く、職業の選択も限られるため「貧困の連鎖」の中で苦しんでします。この地域で育ち、独自の言語で教える教師の存在は、子どもたちに夢を与える憧れの存在で、少数民族地域の教育発展に大きな役割を果たしています。

少数民族出身の教師を養成することは、少数民族地域の教育発展に大きな役割を果たします。
さらに、その地域で育った教師の存在は、子どもたちに夢を与えるロールモデルになるでしょう。

【プロジェクト目的】

少数民族教師養成

1. 主にラオス山間地域の少数民族出身の高等学校卒業生が教師資格を取得し、出身地域で教えられる機会を提供します。
2. 少数民族が暮らす山間地域の教師不足問題を改善します。
3. 少数民族の子どもたちの教育環境を改善し、言語の相違による中途退学者を減らします。

【プロジェクト概要】

【支援できる国】ラオス ラオス

少数民族出身の高校卒業生に教師養成短期大学で勉強できる奨学金を提供します。同短期大学には、小学校準備過程から高校教師まで、在学期間も1~4年間の様々なコースがあります。

対象となるコース:2年間の小学校・プレスクール(小学校準備過程)教師コース

山間地域の少数民族は、固有の言葉を話すため、多くの子どもたちが全くラオス語を知らない状態で学校に入学します。その結果、教師とのコミュニ―ションが取れないため授業についていけず留年する生徒が後を絶ちません。さらに、ラオス政府は小学校の敷地の中に小学校準備過程クラスを設け、子どもたちが小学校の授業を理解するために必要な教育を提供する取り組みを行っています。この段階に少数民族の教師を配置することは、少数民族の子どもたちが着実に教育を続けられる強力なサポートになります。

対象となる短大

  • パクセ(Pakse)教師養成短期大学
  • サワナケート(Savannakhet)教師養成短期大学
  • サーラワン(Saravan)教師養成短期大学

【プロジェクト費用】

学生が卒業するまでの2年間、ご支援金額は1名(1口)あたり30万円(15万円/年)です。
ご寄付方法は、基本2年一括ですが、
1 年毎をご希望の方はご相談ください。

【報告書】

支援者様には、下記のような報告書を3回送付させていただきます。

証書:入学後半年以内(1月末)
奨学生の写真や情報を記載しています。

 

年間報告 :1年時終了後(11月末ごろ)
学校の紹介、感謝のメッセージ、奨学生の学校での生活を写真などで報告します。

サワナケート教師養成短期大学の図書館前にて

卒業報告:卒業後(10月末)
卒業式の写真、卒業証書、感謝のメッセージをお知らせします。

2019年度卒業生の卒業証書

【卒業生の声】

・ドゥアン・ヤウンマニーさん(小学校、中学校での教師を経たのち、現在は高校で化学を教える

ドゥアンさんはラオス南部の山間地域に暮らす少数民族の出身です。5人兄弟の長女だった彼女は、父や母が外で働く間、家事や弟や妹の世話をし、勉強をする時間はほとんどありませんでした。家が貧しかったので、留年することもありましたが、一生懸命勉強し、支援を受け高校を卒業することができました。その後、少数民族教師養成プロジェクトの奨学金を受け、2010年にパクセー教師養成短期大学で教員の免許を取得しました。短期大学生時代、「家族と離れての寮生活は、淋しかった。」と話す彼女ですが、短大での成績はとても優秀でした。卒業後、彼女は出身の村に帰って教師になり、しばらくは、小学校で教鞭をとっていましたが、その後、中学校で教諭を経て教頭を務め、現在は、高等学校で化学を教えています。彼女は、生徒たちと教師という職業を愛しています。

 

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2016~2018年にサワナケート教師養成短期大学で学び、教員(小学校)免許を取得した2人が、故郷の村でボランティア教師として働く今の状況を教えてくれました。2人の住む村はそれぞれ、ラオス・カムアン県の中心地から200km以上離れた、舟で川を渡らなければ、訪れることできない山岳地帯にあります。子どもたちの家から小学校までの道は、舗装されておらず、インターネットも通じません。小学校があるカムアン県ナカイ郡の中でもとりわけ、貧しい地区で働く2人ですが、地元で働けること、地域に貢献できること、そして何よりも、子どもに自分と同じような教育の機会を与えていることに喜びを感じています。

・マニライ コンマニタンさん(小学校3年生を担任)

カムアン県ナカイ郡テルン村で7人兄弟の6番目として生まれ、父は、早くに亡くなり、母が子どもたちを女手一つで育てました。現在働いている小学校は、在校生は47名、算数と社会などを教えます。私に教育支援して下さった方、その業務に関わった方すべてに感謝しています。その思いは、私の家族も同じです。これからは、私が子どもたちを教え、子どもたちの可能性を広げていきたいと思っています。そのためにも、自分の知識を増やし、教える能力を向上させてより良い教師になりたいです。


・オンチャイ・ケオミクサイさん(小学校1年生を担任)

カムアン県ナカイ郡ナメリ村で6人兄弟の5番目として育ちました。現在は、隣村にある小学校で、国語、算数と社会を中心に教えています。在校生は92人、教師は4人います。家からは、川を舟で渡らなければ小学校に通うことができないので、教師は皆、学校の寮で暮らしています。小さい頃から家が貧しく、教育を十分に受けることができないと思っていたので、今、自分が教師養成短期大学を卒業し、教師になっていることが夢のようです。このいただいた機会を大切に、地域に貢献できる教師になりたいと思っています。

 

 

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ラオスにおける新規教師採用の現状

国勢調査によると、教師は慢性的に不足していて、ビエンチャン近郊では教育に携わる職業に就く人が48,000人1)を超えていますが、民際センターが支援する地方では32,000人1)に届きません。このことは、収入の少ない人々が住む地域における教師の不足をさらに深刻にしています。また、2015年以降の教師の人件費に割かれる国家予算は微増していますがその中で小学校の教育に割かれる予算は削減されています。 
また、ほとんどの学校が公立学校のため、私学学校の教師以外は公務員です。民際センターラオス事業所の所長の報告によると、ここ近年、ラオス国内の景気の悪化や国家予算の削減で、政府は公務員の新規採用を2017年は3,000人、2018年は1,500人、2019年は1,500 2)としていて、その数は、減少傾向にあります。 そして、その傾向は、教員養成学校の卒業生が教職に就くことを難しくしています。一方、教育現場では、教師(ここでいう教員とは有給で働く教師)が不足しているため、地域によっては村人や学校が、食費、住居、交通費などを融通して、新しい先生を無給、つまりボランティアで受け入れる試みを行っています。それらは、地域と無給で働く教師の合意で行われおり、ほとんどの教師が、将来、その地域の教育機関や学校やで有給で働けることを条件に働いています。しかし、お給料をもらえるまで長い時間がかかるので、そのような無給の先生の数が近年増え続けているのです。政府としても、それらすべてのボランティアを教師として雇うことができないため、村が新しい無給の教師の受け入れさえも制限し始めています。それらの影響を受け、近年、民際センターが支援する「少数民族教師養成プロジェクト」の中には、卒業後、教師として働けないケースが出てきました。

残念ながら、ラオス政府における教育予算の削減による教師の採用枠の減少は、民際センターが解決できる問題ではありません。ですが、支援地域における教師の不足は深刻です。教師の充実は、子どもたちへの教育には不可欠と考え、教師への支援も視野に入れつつ、民際センターは、引き続き少数民族の教師プロジェクトへの支援を実施します。

<引用資料>
1)  LAO STATISTIC BREAUによる2015年国勢調査
2)  Laos 360°C (ラオスの新聞)

 

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