【ベトナム】枯葉剤の被害に遭いながらも頑張る奨学生

ベトナム戦争(第二次インドシナ戦争)時、枯葉剤を米軍が散布したのは、ゲリラの潜む山林などを丸裸にして敵軍をあぶり出すのが目的でした。しかし、そこに含まれる猛毒のダイオキシンは、がんや精神障害など、枯葉剤を浴びた人や、ダイオキシンで汚染された食物を食べた人に様々な障害を引き起こしています。さらに恐ろしいのは、その影響が受けた本人のみならず、子や孫など子孫に引き継がれてゆくことです。ベトナムではひ孫まで4世代にわたってダイオキシンの影響で様々な障害が起きていることが確認されています。
ベトナムについて
ベトナム戦争における枯葉剤とは

ダオ・ティ・ランさん(12歳)のお話し 2015年2月

ダオ・ティ・ランさんはナムチン中学校の1年生。ベトナムで最も貧しい地域と呼ばれる、北部のタイビン省に住んでいます。
枯葉剤の悲劇は、ランさんの家族にも起きました。
ベトナム戦争が終結して今年はちょうど40年目となります。しかし、その戦争に従軍した祖父のダオ・ヴァン・ヴィェームさんは、米軍が散布した枯葉剤を浴びました。戦争が終わり、田舎に帰ってからヴィェームさんは体調を崩しました。何をやるにも力が入らず、天気が悪くなったり、季節の変わり目には身体のあちこちが痛みました。また、10年ほど前から視力も失いました。
政府はヴィェームさんを枯葉剤の被害者として認定しましたが、2013年、73歳で亡くなってしまいました。

ランさんの父親も生まれつき目が見えないほか、ランさん自身も体が弱く、骨が通常より細く、力がありません。枯れ葉剤の影響ではないかと考えられています。家族の中にあってすべてを引き受けていたのはランさんの母親でしたが、ランさんが2歳の時、家計を少しでも助けようと魚を取っていた時に川で溺れ死んでしまいました。それを不憫に思った父親の幼なじみの力添えもあり、父親は再婚をしましたが、生活の苦しさに変わりはありません。

現在は義母が漁師船に乗り込み、漁の手伝いをしたり、料理を作って得る月200万ドン(1万円強程度)が家計のすべてです。
しかし、それとて安定しているわけではなく、海の状態と捕れた魚の数次第という状況です。
そして義母と父親の間には2人の子どもができ、ランさんには妹ができました。妹たちは5歳と3歳で、面倒は見るのはランの役目となっています。

ダオ・ティ・ランさん
ダオ・ティ・ランさんの家事の様子
 

祖父の軍功で政府から援助が出たので、7年前に質素な家を建てました。12畳程度のスペースに、壊れそうなベッドが1つ。
そこには父親と小さな子ども達が寝て、義母とランさんは冷たいコンクリートの上にござを敷いて寝ています。
家にドアと窓がないのは、お金がなかったから・・・。
「それに、泥棒が入っても盗まれるものはどうせないので」と義母は話していました。

ダオ・ティ・ランさん家

昨年5月、ランさんは小学校を卒業しました。中学校へ1年間通うためには、家の1ヶ月分の収入と同じ200万ドンほどが必要です。
小学校では歌が上手ながんばり屋さんとして知られ、成績も非常に良かったランさん。
しかし、2人の妹が学校に通うことを考えて、中学への進学は最初から諦め、入学式にも出席しませんでした。
ところが、通っていた小学校の先生が近所に住んでいて、学校にいるはずの時間にランさんが家にいることに気づいて、「なんで家にいるの?」と尋ねたところ、ランさんは「もう学校には行かない。お金がないのを知っているから、あきらめます」と泣きながら話したのです。先生は、その年からランの通うはずの中学校で民際センター奨学金の配布が始まったことを耳にしていました。

調べてみたところ、まだ申し込み期間中であることが分かり、ランさんと家族に申請を勧めました。ただ、ひとつ問題もありました。中学へ入学するためには6月に試験を受けなければなりませんが、それがとっくに終わっていたのです。
しかし、中学校の先生たちと教育委員会の協力で、特例としてランさんのためだけに試験を実施させることを決めたのでした。
これはタイビン省では初めてのことでした。晴れて1ヶ月遅れで中学生となったランさん。
1学年3クラス111人のうち、優秀な生徒だけを集めた23人の特別クラスで今、勉強ができる喜びをかみしめています。
そして、ダオ・ティ・ランの記憶に、ダルニー奨学金を支援してくれた日本人 T.F 様のお名前が心に深く残るのでした。 
2015年2月の出来事です。

5年後のダオ・ティ・ランさん(17歳) 2020年9月

ベトナム タイビン省のダオ・ティ・ランさんから、EDF-Vietnam(ベトナム事業所)に、当時ご支援を頂いていた日本にお住まいの T.F 様に、現在のダオ・ティ・ランさん、そして家族との写真とともに、お手紙が届きました。
ダルニー奨学金の支援が開始されて5年後のことです。お手紙を翻訳したものをご紹介します。

 
2020年9月4日 ナムチン(ベトナム)にて 
  

 

親愛なる T.F

T.F 様、EDF(民際センター)の皆さん、こんにちは。私は2014年から6年間、ダルニー奨学金を授与したDao Thi Lan(No. V1402014)です。今日、私の支援者であり恩人である T.F 様と、EDF-Vietnam,そしてEDF-Japanの秋尾理事長にあいさつの言葉を伝えるためにベトナムのタイビン省からこの手紙を書いています。
あなた方のように優しい心を持った人々のいる美しい日本という国に一言お礼を言いたかったのです。

私が中学卒業するために、EDFから支援を最初に受けてから6年の歳月が経ちます。EDFの奨学金を受けるまで私の人生は、タールのように真っ黒でした。同い年の友人たちはみんな学校へ通っているというのに、私はずっと家にいて、親しくしているのは飼育している何匹かの牛たちだけです。母親は亡くなり、父は視覚障害者で、誰も私の学費を払ってくれる人はいません。でも神様は私のことを気にかけてくれていたのでしょう。そんな私が一番苦しんでいたその時に、EDFを遣わしてくれました。

秋尾理事長が私の前にやってきて、T.F 様からの奨学金を私にもたらしてくれると告げたその日は、母親の死から始まった長く暗い人生に突然差し込んだ光のようでした。秋尾理事長とEDFのスタッフが私の家族を訪れた時の写真があります。学校の先生が送ってくれたものですが、私はそれを大切な宝物として、何枚もプリントアウトして家のあちこちに置いてあるのです。1枚がなくなっても困らないようにと。
私の祖父は、秋尾理事長と同い歳なのですが、その祖父が南ベトナムの戦場で戦っていたその時に、秋尾理事長は英国でベトナム戦争に反対する活動に加わっていたと聞きました。
だから私は秋尾理事長のことを親しく感じ、おじいさんと呼ばさせていただいております。

秋尾おじいさん、ご機嫌はいかがですか?私はいつも(日本に関する)ニュースを気にかけて見ているのですが、日本はコロナウィルスで大きな影響を受けていると聞いています。どうか人混みを避け、公共の場ではマスクを着用し、他の人と2メートルの距離を保ってください。この感染拡大は高齢者に大きなダメージを与えます。手を消毒し、暖かいお湯で口をゆすぐのを忘れないでくださいね。

私は今年、17歳になり、もうすでに働き始めています。もはや生徒ではありませんので、今更ながらになりますが、EDFが私の中学卒業を手助けしてくれたことに心から感謝しております。私の国では、中学校の卒業証書があるかないかは、 私のように特別な技術を持たない労働者が仕事を探す際に、もっとも重要な条件になります。卒業証書のおかげで私は無職にならずに済んでおり、今は家から15キロ離れたところにある革靴の製造会社に勤めております。ドルに換算すれば毎月160ドルの月給ですが、自分自身の生活費を賄い、自分のおじいさんを少し助けることもできます。写真を見ていただければ、私がどのように成長しているか、見ていただけると思います。
私にはまだボーイフレンドはいませんが、いつか結婚できた時には T.F 様とEDFがどのように私の人生を助けてくれたか、私の夫となった人に必ず話すでしょう。もちろん、EDFに私の結婚式の写真を送りますね。結婚できればの話ですが。

私はいつも T.F 様とEDFに感謝の気持ちを持ち続けています。皆さんがご健康であることと、さらにもっと多くの私のような環境にある子どもたちを助けてくださるよう、願っております。

Dao Thi Lanより

 

当時のダオ・ティ・ランさん(中学生)の写真

     

現在のダオ・ティ・ランさん(17歳)の写真

 

民際センターより、ダオ・ティ・ランさんからのお手紙を、支援者である、T.F 様にお届けしました。
当時ご自身の、ご子息への思いと同じように、「親の気持ちを勝手に重ねて支援に参加したものが、思いもかけずこのようなお手紙をいただいて、素敵なプレゼントを受け取った気分です。また、当時の写真と頂いた彼女の現在の写真をみて、彼女の成長した姿を大変嬉しく思います。あらためて、彼女へお手紙の返信を書く予定です。」とのお言葉を頂きました。

 

「ダルニー奨学金」は、ドナー1人につき1人の子どもを支援し、子どもには誰が支援してくれているのかを伝える、顔が見える、成長が見守れる、1対1の国際里親制度の教育支援システムです。
1日当たり40円、月々1,200円、年間14,400円の支援で、子どもが1年間学校に通うことができます。

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