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12月 2025

【タイ】ダルニー奨学金担当教師 スナン先生へのインタビュー

貧困、家族の離散、限られた教育機会――タイの農村地域では、多くの子どもたちがこうした困難に直面しながら学校に通っています。

このたび民際センタータイ事業所が、タイ東北地方のカラシン県にある小中学校にて、ダルニー奨学金に長年携わってこられたスナン先生にお話を伺いました。

貧困や家庭の事情から困難を抱える生徒たちの現状、奨学金が彼らの学業と生活に果たす重要な役割、そして奨学金担当として先生自身が感じられた喜びや感動について語ってくださいました。

また、タイの教育が直面する最大の課題である「貧困」や「生活環境」の問題、ダルニー奨学金への期待、そして教育格差の是正に向けた提言など、貴重なご意見をいただきました。ぜひお読みいただきたいインタビューです。

 

 

民際センタータイ事業所(以下、タイ事業所):自己紹介をお願いします。
スナン先生:こんにちは、私の名前はスナン・アリサポー、ニックネームはパオです。現在、カラシン県にあるラオヤイワナソンパドゥンウェート校の小学校4年生から6年生の英語と、小学校4年生から中学3年生までのコンピューターサイエンスを教えています。教える仕事の他に、学校の総務部長も担当しており、奨学金、生徒支援システム、校舎の管理、その他関連業務を担っています。

タイ事業所:ダルニー奨学生たちの状況について教えてください。
スナン先生:2025年度には、本校の生徒29人がダルニー奨学金を受給しました。これらの生徒は貧しい家庭の出身で、両親が離婚しており、祖父母や叔父叔母などの親戚と暮らしているケースが多いです。経済的な問題により通学が困難です。民際センターからの奨学金支援は、彼らが日々の生活を送る上で大きな助けとなっています。

タイ事業所:なぜ奨学金が生徒にとって重要なのでしょうか?
スナン先生:私たちの学校は、生徒が貧しく、多くの面で準備が整っていない地域にあります。この奨学金は、生徒の学校生活における原動力となり、お昼代や学用品を買うための資金になります。もしこのようなご支援がなければ、生徒たちは多くの機会を失い、経済的な理由で教育システムから脱落する可能性があります。

タイ事業所:奨学金担当者としてのご経験や感動したことについて教えてください。
スナン先生:私は2018年から奨学金の仕事をしており、何世代にもわたって生徒の成功を見てきました。私が受けた感動の一つは、生徒にチャンスをつなぐ役割を担えたことです。私は奨学金担当者として、生徒を審査し、生徒一人ひとりがどんな状況に置かれているのかを確認し、その情報を元に民際センターに支援を検討してもらいます。過去7年間で、生徒たちが受けとった小さなチャンスが彼らにとって大きな喜びとなり、将来的に良い人間を育てる力になることを、私は学びました。特に、身体に障がいのある生徒たちが学校を卒業後、望む分野に進学したことが私にとって大変感動的な経験です。

タイ事業所:奨学金担当業務を通じて何か感じられることはありますか?
スナン先生:学校の奨学金事業を担当することで、私自身の視野が大きく広がりました。私は生徒の可能性を目の当たりにし、奨学金というものが単に生徒たちに必要なお金を使えるようにするためのものだけではなく、生徒の命をつなぐ支えとなり、勉学を続けたいという気持ちや学校に残りたいという意欲、そして友達と共に過ごす力になるのだと学びました。特に貧しい生徒たちは、奨学金をもらうととても喜び、心優しい大人から機会を与えられたことを実感できているのを感じます。この経験がきっかけとなり、私はさらに多くの奨学金を探し出し、生徒たちが希望する高校や職業コースに進学できるよう尽力しようと思うようになりました。これまでにも、すでに多くの生徒を支援することができたと感じています。

タイ事業所:タイの教育の充実・発展への最大の障害や問題は何ですか? 
スナン先生:私にとって、国の教育の発展に最も影響を与える問題は、「貧困」です。特に農村部では、ほとんどの生徒が貧困家庭に住んでおり、両親は家族を養うために他県へ働きに行かなければなりません。この状況は、一部の貧困地域のみの問題ではなく全国的な問題へと広がっています。多くの生徒が貧困のために学ぶ機会を失い、教育システムから脱落せざるを得ません。こういった貧困問題こそが、私たちの国の教育をあるべき姿に発展させる上で大きな障害となっています。この貧困問題を解決できて初めて、生徒に安定した教育の機会を創出することができ、持続可能な解決策につながると信じています。

タイ事業所:奨学金があっても解決が難しい問題は他にありますか?
スナン先生:「環境」です。奨学金は生徒の日々の生活を助けることはできますが、彼らの「生活環境」を変えることは難しいです。農村部を中心に、多くの生徒たちは決して安全な環境に住んでいるとは言えません。教師にできることは限られており、持続可能な問題解決になりません。もし彼らの住む環境を改善する手助けができれば、教育は改善し、生徒が得たチャンスは持続可能なものに繋がると信じています。

タイ事業所:民際センターの奨学金制度についてご意見をお聞かせください。
スナン先生:長年にわたって継続されている非常に良い制度だと思います。良い点は、非営利団体であり、何の制約もなく生徒を心から支援していることです。民際センターの奨学金は、生徒の夢や未来を築き、彼らが望む道を歩み続けるための資金となります。改善点としては、まだ支援対象になっていない学校をもっと受け入れることと、奨学金が行き渡らなかったクラスにも毎年奨学金を届けることで、より多くの生徒に学ぶ機会を与えてほしいと思います。

タイ事業所:政府や教育関連組織に伝えたいことはありますか?
スナン先生:政府や関連機関には、教育の本当の問題、すなわち「教育格差」に目を向けてほしいです。特に、タイのあらゆる地域にまだ存在する貧困問題です。多くのタイの子どもたちが、不平等な教育機会によって道を閉ざされています。もし政治や社会制度の改善・整備により、奨学金のより積極的な支給や教育を受ける平等な機会提供といった「希望」を子どもたちに与えることができれば、国の教育は発展し、将来的に国の中核を担う質の高い人材を育成できると信じています。

タイ事業所:支援者の皆様へメッセージをお願いします。
スナン先生:皆様に心から感謝申し上げます。皆様は、タイの生徒たちに学ぶ機会を創出する一員となってくださいました。奨学金は生徒にとって極めて大きなチャンスとなり、夢を築き、より良い日常生活を送る手助けとなります。そして、その資金が未来の“有能で善良な人間”を育てる一助となると信じています。ありがとうございました。

 

スナン先生のお話から、奨学金の支援が単なる金銭的な援助ではなく、生徒たちの「生きる力」や「学び続ける意欲」を支える大きな希望であることが伝わってきました。経済的な理由で教育の道を断たれてしまう子どもたちがまだ多い中で、先生のように現場で一人ひとりの生徒と向き合い、学ぶ機会をつなぎ続ける教育者の存在は何よりも貴重です。

そして、支援者の皆様の温かいご支援が、その努力を支え、タイの未来を形づくる原動力となっています。

民際センターはこれからも、教育の格差をなくし、すべての子どもたちが夢に向かって歩める社会の実現を目指して活動を続けてまいります。生徒たちの未来を信じ、応援してくださる皆様に、心より感謝申し上げます。

民際センタータイ事業所

 

「ダルニー奨学金」「HOPE奨学金」は、ドナー1人につき1人の子どもを支援し、子どもには誰が支援してくれているのかを伝える、顔が見える、成長が見守れる、1対1の国際教育里親制度です。皆様からのご支援、お待ちしております。

 

タイ・ミャンマーの奨学金の締切日は3月20日です

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